日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)・指導医・認定医の区別について

 
日本矯正歯科学会の資格認定制度は、学会として矯正歯科医の技術と経験を認定し、資格証を発行することにして、これを基に広く国民に矯正歯科医を選ぶための基準を提供しようとするものです。この制度は、日本のその他の資格認定制度に比べてもその基準が厳しく、高い技術と経験が要求されています。
矯正歯科医には技術と経験のグレードにより3種類の資格があります。

1.日本矯正歯科学会認定医〈もっとも基本的な資格〉
日本矯正歯科学会認定医を取得するには、
a. 5年以上日本矯正歯科学会の会員であること
b. 学会指導医の下でさらに5年以上矯正歯科に専門的に従事すること
c. 学会誌にオリジナル論文を発表すること
d. 学会の定める試験に合格すること
が最低限必要になります。以上の点をすべて満たすと、学会認定医として資格証が交付され、公式に矯正歯科医として自分の判断で治療することができるようになります。

2.日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)〈治療の技術の優秀性を証明する資格〉
さらに学会では日本矯正歯科学会認定医の中で特別に技術と経験が優秀であるものを選抜して、日本矯正歯科学会臨床指導医という制度を敷いています。この資格の取得には
a. 7年以上継続して日本矯正歯科学会の会員であること
b. 矯正治療に関する学術論文を発表すること
c. 学会の定めた10種類の課題症例を自分で治療し、その全ての治療結果と予後判定が学会の定めた基準を満たして合格すること
という非常に厳しい条件が付けられています。

3.日本矯正歯科学会指導医〈研修医を指導する資格〉
また日本矯正歯科学会臨床指導医とは別に学会では、矯正歯科の研修医を指導監督する特別の教官資格として、日本矯正歯科学会指導医という制度を敷いています。日本矯正歯科学会指導医になるには、大学の矯正歯科において教育指導歴が3年以上あることが必要となります。
 
 

日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)と指導医・認定医はどう違うのか(区別)

ここで多くの皆様が迷われるのは、認定医よりも日本矯正歯科学会臨床指導医と指導医がグレードの高い資格だと言うことは分かるが、では日本矯正歯科学会臨床指導医と指導医の違いは何かと言うことでしょう。
一言で言いますと指導医は、矯正を人に教えるための教師としての資格であるということです。したがって研修医は指導医の下で勉強しないと認定医試験の受験資格が与えられません。そういう意味では指導医に課せられた教師としての責任は非常に大きいと言えるでしょう。ところが指導医になるには治療の技術が高いかどうかは問われていないと言う問題があります(大学に一定期間在籍すればよい)。教える技術と実際に治療する技術は必ずしも一致していないと言うことです。

どの分野でも教師よりも勉強のできる学生、監督よりも優れた能力を持つ選手などがいるのと同じで、日本矯正歯科学会認定医の中には日本矯正歯科学会指導医以上の治療技能を持つものが少なくありません。そこで実際の治療技術に秀でたものを選抜したのが、”日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)”といえるでしょう。現役のプレーヤーとして一流であることを証明する資格と考えて間違いありません。

ここでもう一つ注意しなければならないのは、いわゆる一般的な言葉としての”・・・専門医”と、日本矯正歯科学会臨床指導医とは意味が全く異なると言うことです。広い意味において「私は矯正の専門医です」という言い方は、「矯正だけ診療している歯科医師です」という意味であって、日本矯正歯科学会臨床指導医であるという意味ではありません。この点は非常に紛らわしいので注意が必要です。

矯正歯科と看板に書いてあっても、矯正歯科医としてきちんとした資格がある医療機関とは限りません。というのは、現在の日本の法律では、歯科医師である限り法律上はどの専門分野の治療をしても良いことになっているからです。しかし、眼科の先生が胃の手術をしたりしないように矯正歯科の分野は矯正歯科の専門家が担当するのが当たり前のことなのです。逆に、矯正歯科の専門医は、虫歯や、入れ歯の修行はしていないのでこういう治療は自分ではしないのです。
担当医の資格がわからない時には、はっきり尋ねてみても良いでしょう(矯正歯科専門の開業医院であれば、たいてい待合室に資格証が掲示してあります)。
 
いずれにしても、安心して矯正歯科治療を受けるには日本矯正歯科学会臨床指導医が望ましいのですが、最低限日本矯正歯科学会認定医の治療を受けましょう。一度受けた治療は元に戻すことができないのですから。